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バックナンバー 2007年7月
ブナ林は植物共生の環境指標になり、 自然保全上貴重な景域で植生し、 国定公園や世界遺産の指定がある。 京丹後の内山にあり心地よくそよぐ山地帯の、 貴重な森に 「風を青める」 清爽で鮮美な響きを享けた感歎がある。 簡勁な気韻で作者の心模様が出た。
能登半島の震度六強があったのは三月二十五日、 当日桜月忌大会を修していた。 輪島漆器の名産地で朝市でも知れた地域の被災に、 作者は悼む言葉を畳み込むような形容で、 自然風土観の沁みた心情で「……と震災と」献身的に見舞った。 その絶対が正に命。
クラシックでは今年モーツァルト・イヤー。 加齢するとバッハと共に身心に添うという。 作者は 「曲流る」 に喚起されしみじみする感を、 響き高まる思いと 「俤」 の関係で、 デリケートな面を老体に結んでいる。 そこには暗に青年時に心に影響うけた情景が脳裡にあろう。 音=曲の交錯に惹き入れられている姿が切ない。
生活感情の上を作者独特の捉え方と見付けどこから、 日常感触を省いて使い馴染んだ箸に 「生き様」 と、 読み手に何か異様な関心を覚えさせるかに、 切り出した作でそこが作者の哀歓なのだ。 従ってこの塗りは、 前出の輪島物などで無い極平準な品だろう。
句意は説明するまでもない卒業式への批評眼で、 現況の二つの信条を見つめている。 賛否いずれにも戦時体験者には様々違う印象が残っており 「巣立ちの日」 に複雑な感情にとらわれたのだ。
国語の古文的な語感に対する作者の関心を識る表現で、 演能の一曲を味わっている雰囲気が漂ってくる。 審美眼としては未完な点も思うが、 陶然とする感を 「ゆらゆら酔い候」 と、 密度のある詠みぶりに曲調のこまかな音色を、 言取ろうとする潔さを知る。
若々しい息吹きと浪漫で瑞々しい印象への、 回想的な憧れが語韻のi・a・n音のつながり響き合う中に、 派手やかで美しい箸の艶と新婚の日々の、 命の輝きを信じるものをこの句に受ける。
仕舞いの高潮玄妙の情景を思わせる 「しじま裂き」 を感じる。 「一管の笛」 が少し付きすぎだが、 心理の気品が全体に流れた。