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2007年4月
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2007年4月
秀 句 鑑 賞
瑠璃光る
おのれ修してこその朝
松 浦 外 郎
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清澄で透徹な冬晴れの光・景・形・色に、作者=おのれの姿と感合して、気息しずかに心身を修し了えた無碍の感動がある。無比のことばの微塵もゆるぎない霊妙さに、無量寿経など荘厳させ光る全銀瑠璃の、世界を識った無垢な思いに三歎できたのだ。それは見えぬものをみた心の眼と躰の健全さへの生命感謝である。
出立す
醒めてもの憂き春の視野
浅 田 邦 生
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春眠暁を覚えず……の詩句のように、誰しも目覚めてもなおうつつの季、だが作者は教職の人で作句時は受験期、この句の「春の視野」は無性に深く重い影にもやっているのだろう。むしろ春の修羅がすさんで、それが「醒めてもの憂き」歎きに籠るのだ。出で立つ者の強い想いを受取り、望みを捨てず目送する姿を見る。書きすぎるが次句の温かで愛しむ景に意力充ちた情が知れいい。
瑠璃光る
くり返し読み消灯す
赤 島 よし枝
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耽読という語が浮かんで来て、作者の心懐を捉えて離さない書物の、奥深くて愉悦の重量感が窺うように見え、冒頭の「修し」の作と対照した、心の高ぶりの中七の語句を「消灯す」と結んだ処に、 自然な詠みぶりで表わせていて、 著者との感応が映え出た。
出立す
初教壇へ炎ゆ瞳
北 村 俊 子
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句意は明快でくだくだしい思いを言わずして、そして「初教壇へ」冷静でいて純一なばかりに、自らが向かう気構えが語られている。作者は新任の決意を叙べているのだが、その背後の事情よりも、ここでは作品にする上での作者の目と心の動きを買いたい。
出立す
名も無き旗を振り続け
東 城 達 彦
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誰しも幸せで生き生きと暮らせる社会を望み、そのため世相の悪業や権力の不正を糾(ただ)して、できる限り自らの幸福を守ることで生涯したい。然し人間世界は矛盾が多い。そのことを根底に微力でも諦めずに生命輝く「旗」風を起こす。作者の強さが語れた。
瑠璃光る
微動だにせぬ裸婦の像
松 井 英 子
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この裸像は大理石や乳白色のそれでなく、ルノワール、安井曽太郎の彩管表現といえよう。句材は類型多く説明せぬほうがよく、所謂"匂い・移り"を感じとって、そこに美の微妙のことばを持たせ、肌理細かく仄温かい芸術性の光を幸福と感じたい句。
出立す
海鳴り吾を止めおかず
宮 地 忠 子
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春の怒涛を感じさせる。それも私は日本海・玄界灘が想いうかんで、作者の胸に轟く涛音が期待感と不安をも、一瞬静寂にさせ間を置かず、蒼く深い確かな汎(ひろ)がりへさらって行く光景を見る。そこには一切の雑念も洗い去っての、想いゆるがぬ心音が残っていよう。海鳴りには何物をも留めぬ無限の高さと強さがある。
瑠璃光る
文鎮一つ買った日よ
山 脇 治 子
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書を修めるのに欠かせぬ七宝の一つ、「文鎮」を「買った日」のことを述べながら、忘れ得ぬ感銘で宝石にも換え難い、歓びを語っている。文鎮にくすんでいて鮮明な記憶の美を、瑠璃色を湛えているかの深く永遠の瑞々しさで、感じ取った素直さが効いた。
出立す
町の探訪駅降りて
玉 井 節 子
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昨今は各地の歴史発掘とその探訪が多くなり、説明ガイドを配する町が増えた。この作の「町」も駅前の景を見ながら、心は旧い佇まいの匂いをかぐ遊心が「駅降りて」で、触発されている。因みに句は"降りて"と「出立す」が並列だが明るく活気いい。
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