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2006年5月
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2006年5月
秀 句 鑑 賞
急停車
父の声降れ老いの岐路
京 都
滝沢 茂樹
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「評」 作者は温厚な人だから幼い時は、 父を絶対の権力者として畏敬して来られた。 だから切羽つまった 「老いの岐路」 にも、 無意識に進退の判断を亡き父の啓示に求めるのだ。 昔から石橋を叩いて渡ると言う教えを此の人は忘れない。
歌が好き
愛されし日がうす墨に
京 都
松井 英子
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「評」 句意から推察すると亡き人の愛情を、 歌に寄せて追慕する句だが、 遠き日の幸せを 「うす墨」 と詠むところに、 人の世のはかなさが感じられる。 作者は熱心なクリスチャンだから、 その色は神の祝福を得た人のみが与えられる。 永遠に変わることなき清らかな愛を象徴した色彩と言えよう。
急停車
修羅を避けよと神の加護
滋 賀
河野久美子
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「評」 冠題を広く人生の曲折と解した句で、 もし気が向くままに暴走すれば他人との争いや、 家庭の崩壊が起きることを予想し、 自制こそ神の加護であると説く着想は、 普通の作者の思いも及ばぬ哲理で、 神仏の恵みを具象化した秀吟。
歌が好き
別れの宴も華の渦
長 浜
夏原美津江
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「評」 誰かの送別宴であろう。 始めは静かな宴会場も酒が入ると段々活気を帯びて、 カラオケや民謡など果てはダンスに興じる人まで現れ、 賑やかな情景を 「華のうず」 と詠み止めた点が良く、 句意の奥にひそむ離愁を誰も気付かない。
急停車
己が墓穴を掘る過信
豊 中
澤村 福男
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「評」 ライブドア事件から近くは民主党の偽メールまで、 思えば取り返しのつかぬ行為はすべて自己過信に依る。 作者はそれを 「墓穴を掘る」 と表現した。 急停車は乗り物だけで無く、 私達の生活に隨いてまわるアクシデントなのである。
歌が好き
あふれる想い悲も愛も
長 浜
笠原 玲子
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「評」 かの遠き日の花の野に 来ぬ人待ちて摘みし花 愛のよろこび知り初めし 乙女の甘きファンタジー。
歌に寄せて過ぎ去りし青春時代を偲ぶひとときを、 詩情ゆたかに詠み止めた甘美な句で、 表現も完成している。
急停車
地獄の釜の底を見る
京 都
安田 清一
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「評」 京都では周山街道や比叡山ドライブウェイが急坂で有名な難所だが、 急カーブから見下ろす風景は美しいよりも、 此の句のような印象を受ける。 特にガードレールが凹んだり壊れた箇所は、 まさに此の句の通りだ。 実相の句ゆえ怖しい。
本社準客員、 筑紫磐井先生 (東京) が角川書店発売に依る 「詩の起源」 の表題で、 詩歌の発生とは何か?と言うテーマで、 現代の古典ともいうべき藤井貞和の古日本文学発生論を精緻に読み解き、 詩の起元論の行方を定型詩学から展望。 三百十一ページに及ぶ立派な研究書を発行された。
内容としては第一部 「発生論の吟味」、 第二部 「発生論の批判」 第三部 「起源論の解明」 のほか参考として定型詩学入門と題して、 冠句についての記述も有る貴重な書である。
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