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優秀冠句

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2006年4月






秀  句  鑑  賞
春うらら 燃ゆるもの欲し老樹とて 京 都 清水 竜一  ▲戻る
   「評」春の陽気に誘われて咲く花の中でも、桜は散りぎわの良さで愛されるが、作者は老樹の姿を借りて切実な心情を吐露する。それは詩人として枯れぬ詩情を求める私達の共感を誘う。付句の流麗な句立てが良く、汲めど尽きせぬ余韻が美しい。
肩寄せて 終の棲み処の春おぼろ 大 津 山口 華歩  ▲戻る
   「評」漂泊四十年におよぶ流浪の俳人一茶の名句、「これがまあつひの栖か雪五尺」を踏まえた句で、風光明媚な湖国に住む感謝と喜びを中七に噛みしめ、華やかな座五「春おぼろ」で結んだ技巧は、並々ならぬものがある。
肩寄せて 子と受く弔辞泣くまいと 神 戸 伊関 和風  ▲戻る
   「評」前後の事情を詠まず、いきなり悲痛な情景を描写した臨場感に圧倒される。特に劇中劇を思わせる座五の、肉声にちかい感情のたかぶりが涙を誘う。クラクションを鳴らしながら去って行く霊柩車の姿には、人の世の悲しみが極まる。
春うらら 少女に羽化の兆しあり 春日井 加納 金子 ▲戻る
    「評」蛹から美しい蝶に変身する〈羽化〉を、思春期の少女に比喩した句で、例え親でなくとも多少は気にかかるが、その心情は伏せて「兆しあり」と詠み取った断定に、詩人としてのロマンと冷静な目が感じられる。
肩寄せて 競い合う趣味日日楽し 京 都 中台 敏隆  ▲戻る
   「評」冠題を広く解して趣味につどう会などを主題に、年齢や職業にこだわらず仲良く睦み合う句で、良きライバルとして競い合う点が愉快。昔から「汝の敵を愛せよ」と言うが、負けまいと頑張ることもまた、長寿につながるのであろう。
春うらら 時計はずして午後の椅子 宮 津 宮地美津恵  ▲戻る
   「評」主婦の雑事から解放された午後のひとときを、わが家の庭や近くの公園などの椅子に、ゆっくりくつろぐ自分の姿を、少し離れて見ている主婦としての作者が居る。其処に中七の詩句が持つ美しい効果があり幻想が湧くのだ。それがまた「午後の椅子」が暗示する、詩的センスの良さと交響してゆく。
肩寄せて スクラム必勝策を練る 小 浜 上野 原星  ▲戻る
   「評」社会人とか大学生のスポーツを句材として、たたみ込むような述詞に、燃えるような熱気と緊張が伝わるが、それが時には選手同士の争いや、応援する人達の乱闘をまねくことも起こる。スポーツはあくまでもフェアプレーでありたい。
 既にご案内のごとく私が担当する「塔映集」も愈々最後の追い込みに入った。振り返り見て正風冠句が持つ文学性と高い芸術性は、正しく伝承して来たと言える。これはすべて句友諸兄姉の熱い信頼に依るものであり、歴代主幹が持って居られる句碑や、句集を何ひとつ持たぬ私が成し得た、最高の贈り物としてその秀句の数々は、これからも永遠に光り輝き続けることであろう。
  それが五代目主幹、松尾松風の最高の誇りであります。


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