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2006年2月
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2006年2月
秀 句 鑑 賞
声やさし
深々と澄む夜の耳
宇 治
住澤 和美
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「評」冠題の声は人だけでなく、広く自然界のいとなみや呼び掛けと解すべきであろう。また座五「夜の耳」が暗示するものは、人の耳だけで無く〈声〉を発する音波をさぐる述詞で、中七の詩句は神の意志を持つ真善美につながる異色作。
寒波来る
戸惑うばかり身のゆるみ
京 都
安養寺和子
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「評」天気予報で豪雪の来襲を知っても老女の哀しさ、なすすべも無くうろたえる句で、其の心理状態を的確に表現した点が良い。特に今年は測候所開設以来の寒波と大雪で、死者も多数出たと報じているから、句主の不安感が痛いほどわかる、無事を祈るばかりである。
声やさし
姑の言葉の裏を聴く
宇 治
大橋 広洋
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「評」女性は加齢と共に思考が深くなり、言葉にキヌを着せるので反って嫌われるが、この句は其の心理の綾を突いている。なお下五の詩句は普通の人では考えつかぬ句立てで、これに依って争いや口論を避けられるのである。役者がいちまい上だ。
寒波来る
妥協許さぬおとこ意地
豊 明
鬼頭美保子
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「評」平井保夫は「寒波来る 見えぬ力で靴紐締め」と、厳冬を迎える気持ちをきわやかに表現したが、この句は女流作家と思えぬ強い声調で、男としての在るべき姿勢を示し冠題に対応した。男まさりの気性でなければ詠めぬ句と言えよう。
声やさし
寡黙も父の愛なれば
京 都
杉本 順保
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「評」父の愛情は母親のように直接的ではないが、何かの節目とか決断を迫られた時や、家長としての判断を求められた時にこそ現れる。作中の父は人生の酸いも甘いも噛み分けた苦労人であろう、流麗な声調が冠題の本質をよく把握している。
寒波来る
命継ぎ足す千羽鶴
瀬戸内
堀本 翠
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「評」病中の人を介護する家族の祈るような気持ちが、中七「命継ぎたす」にうかがえて、紙鶴を折る病窓を鳴らす木枯しの音に映発する。冠題(景)に対応する情感が美しい詞芸となって優美な抒情をつむぐ点も、見すごしてはならぬ秀吟。
声やさし
ときめいた日はもう遠い
京 都
原 愛子
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「評」若い男女の愉しそうな語らいを「ときめいた日は」と直截に切り込み、「もう遠い」と詠嘆する作者。だが句の奥に秘められた青春の日の想い出は、作者にもあった筈である。テレビのドラマは甘美だが、老いの目には作り事に見えるのだろう。
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