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優秀冠句

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2005年12月






秀  句  鑑  賞
暮れる街 人呼ぶ声の嗄れて闇 長 浜 夏原  弘  ▲戻る
   「評」冠句の正風を把握した描写力の確かさが良く、歳晩の街が時間と共に鎮まる風趣を、さながら人が呼び掛ける声がかすれて行く ― と淋しさを強調した力作。特に下二文字が持つ述詞に、流れゆく刻の侘しさが深く伝わって来る。
誘われて 義理が絡んだ重き足 京 都 小宮山初子  ▲戻る
   「評」義理人情は古いしきたりだが、現代でも時には自由を束縛する。それはまた職業や地方の風習によって違って来るが、特に京都はきびしい。作者にとって苦痛以外の何ものでも無いのであろう。真実の句ゆえ表現も重い。
暮れる街 夢喰う吾れも獏に似て 福 井 嶋  弘法  ▲戻る
   「評」獏は中国の怪獣で、人の夢を食って生きると言われる想像の動物。姿は熊に似て鼻は長大とか、嘘かほんとか知らぬが如何にも面白い。さて、この句は年末だが呑気な生活を好む世捨びとだと、自分をバクに比喩した異色作。ハワイでも行って年を越すか ― などと考えて居る。
暮れる街 名残りの章を絵の中に 城 陽 小森 冴子 ▲戻る
   「評」冠題を歳末とか夕景と見る着想がベターだが、この句はさらに深く踏み込んで、人生の晩景とか小説的な結末を視野に入れた文学性ゆたかな句。再びは相まみえぬと思う別離の情が、万華鏡のように浮かんでは消えてゆく。
暮れる街
ニート虚ろに明日を追う 京 都 清水 竜一 ▲戻る
   「評」新しい句材は時に失敗し易いが、無気力な若者の生活や考えを的確に詠み止めた点が良く、生きる目標を持たぬ視野が今日も暮れて行く。私達は平和な生活を望むが、過ぎたる平和は人々を愚かにして行くのかも知れぬ。
誘われて 生き方変えた師の訓 長 浜 川村 峯子 ▲戻る
   「評」人生に師と仰ぐ人を得た作者は幸せである。だが選者は思う、「師」は天地神明すべてに在りと、それは例えば旅に出たり趣味のつどいなど、また咲く花、散る花、鳥のさえずりや、人の生老病死などすべての生成化育には歓びと、哀しみが秘められて居ることを知る、人を信じ愛する真心もまた生きる指標であり、人生の「師」であると思う。
暮れる街 悲喜こもごもに灯が揺れて 京 都 竹内 満子  ▲戻る
   「評」おなじ作者の「暮れる街 故郷恋しと風が哭く」も良く、歳晩のあわただしい光景が目に浮かぶ。泣いても笑っても新しい年を迎えるのだからと、正月の準備の買物に出掛ける作者の姿が、流れるような人ごみの中に消えてゆく。


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