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優秀冠句

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2005年11月






秀  句  鑑  賞
石の冷え 濁り世とても花尽きず 京丹後 山中 正弘  ▲戻る
   「評」世の中は乱れ人の心は荒ぶ現代を濁り世と見れば、祖霊の追福を願う心やさしい供花こそ麗しい。以前誰かが「墓は静かな人ばかり」と詠んだ記憶があるが、冠題の冷に対し、暖かな心情を配した点が良く、表現にも難がない。
謎秘めて 弥勒菩薩の思惟ふかく 京 都 北原 敏子  ▲戻る
   「評」洛西、広隆寺に祀られる弥勒菩薩半跏思惟像は国宝だが、腰を掛け物おもわしげな姿に哀愁がただよう。作者はこの広隆寺の近くに住み功成り名遂げた人。最近入院生活から現世に戻った喜びも神の加護と思えば、殊さら有難い。
謎秘めて 流れる如き遺書の文字 高 梁 川上 岳人  ▲戻る
   「評」遺書と言えば九州指宿の「知覧特攻平和会館」に遺る特攻隊の、若き隊員一二二六名の遺影、遺品、遺書や絶筆などの展示の品々を思い出す。征きて還らぬ飛行兵として南海に散った若者の書状は、文字の乱れも無く後世に残る。また戦乱の武将や高僧の筆跡には、いささかの曇りもない。
石の冷え 日々好日を座右の銘 京 都 佐々木敏子 ▲戻る
   「評」人の心は計り難しと云うが、世の中すべて善人ばかりと限らない。だが句主は善意の気持ちを大切に生きる事こそ、世の中を明るくし、幸福の一歩だと信じる。冠題の説明に終わらぬ暖かい信念は世の中を明るく、人を優しくしてくれる。
謎秘めて
偽善の咎め拭えずに 長 浜 伊藤 茂治 ▲戻る
   「評」例え善意であっても時に依っては売名だと言われ、思わぬ中傷を受ける時がある。国のため地域のために良かれと思った事も、思えば出しゃばりの行為かも知れぬ。失意の淵に沈む作中人物に寄せる言葉は、彼を傷付けるだけである。
石の冷え 愛の轍の錆深く 瀬戸内 野崎 昭子 ▲戻る
   「評」冠句は詩型が短いので時に依っては作者の意図と、異なる解釈を受ける場合がある。この句は亡き人に寄せて遠き日の愛の軌跡を振り返って、心の奥にひそむ激しい追慕を吐露した絶唱句と解せられる。だが失くした愛の長恨歌かも知れぬ、いずれにもせよ激しい詩句が冠題を生かした秀吟。
謎秘めて 闇へ幕引く政治劇 福 井 笹木  昭  ▲戻る
   「評」おなじ作者の「石の冷え 宇宙は黒地の星小紋」の座五も良く、政治劇の句も結局犯人や収賄の行為が判明していても、公的な団体の寄附金として時効を迎えるのである。中七の措辞が良く、今後の活躍を期待します。
   

 冠題を読んですぐ思い浮かぶ着想や述詩は砂糖水と同じで、作者の思いの断片にしか過ぎない。その砂糖水(着想)を煮詰めて結晶させ、透明度の高い句に仕上げる作法をマスターした時、作者の句は光りを発するのです。ダイヤもカットの仕方で価値が変わって来るように、着想や句材をおろそかにせず、自分の情熱を注ぐよう推敲をかさねよう。其の努力が自分の句に光りを与えて、選者や読者の目を引くのです。

   


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