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優秀冠句

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2005年10月

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name013 name012 name011 name010 name009 name008 name007 name006 name005 name004 name003 name002 name001 松尾松風 主幹薦





秀  句  鑑  賞
見え隠れ 美辞に棘あり冬そうび 近江八幡 古川きよ子  ▲戻る
   「評」 華やかな社交界には虚栄や虚言が渦を巻く。 特に芸能人の場合はその落差がきつい。 美しい容姿を誇る若い女性などに対する美辞麗句のはしばしに、 見え隠れする鋭い言葉のトゲに傷つくのは相手だけで無く、 作者自身かも知れない。
見え隠れ 虚飾の海に溺れ果て 津 山 東城 達彦  ▲戻る
   「評」 会社の公金を使い競馬や遊興におぼれる男性や、 身を飾ったり、 人に自慢したくて宝石類を買い集める女性など、 「虚飾の海」 に浮き沈みする人間のあさましさは、 永遠に変わることなく繰り返されるのであろう。 噫。
断われず 無職に辛い義理ひとつ 舞 鶴 稲葉恵美子  ▲戻る
   「評」 以前、 老人の年金をあてにしたシルバー産業が栄えた時代があったが、 低金利時代の現在では生活するのが精一杯で、 町内や親族との交際もままならぬ現実に悩む時代になった。 この句は老人だけでない厳しい世相を暗示している。
断われず 滅びの彩を陽に晒し 長 浜 夏原美津江 ▲戻る
    「評」 前句は現代の実相を詠んでいるが、 この句は冠題に対する心理的な負い目を 「ほろびのいろ」 と抽象化した暗喩が巧み。 さらに心ならずも従うみじめさを 「陽に晒し」 と詠み止めて、 断ることの出来ない情のもろさを自虐した、 心理描写の限界へ切り込む詩精神が選者を圧倒する。
見え隠れ
柔和な顔に妬心秘め 京 都 酒井  清 ▲戻る
    「評」 昔から外面女菩薩内心女夜叉と言って、 人の心の奥は計り難しと説いたが、 男の浮気や愛情のもつれなどは隠しても他人の知る処となり、 またそのうわさを聞けば、 例え菩薩のような柔和な顔にも暗い影がさす。 恐ろしや。
断われず 束ねて重し錆びた鍵 宇 治 大川喜美尾 ▲戻る
    「評」 信頼は時と場合では相手に精神的な負担を掛ける時がある。 中七 「束ねて重し」 が依頼された側の気持ちを的確に表現。 「錆びた鍵」 に古い伝統や格式が想像される。 簡潔にして句意深く短詩文芸 「冠句」 の核心を把握した秀吟。
見え隠れ 夢さがす旅まだ序章 西 宮 福島  旭  ▲戻る
    「評」 冠句のロマンと青春性をみごとに具現した句で、 中七を普通の旅行と解するも人生の旅と解するも良く、 「夢」 を幸福と見れば案外それは、 作者の近くで微笑しながら、 見付けてくれるのを待っているかも知れない。
作 句 メ モ
松 風

 文芸塔の塔映集では原則として叙景の冠題と叙情の冠題を出題しているが、 作句の基本は叙景 (風景や季節のモノ) には叙情の付句を配し、 叙情 (思いや喜怒哀楽のからんだ気持) には叙景の付句を配するを良しとしている。 つまり一句 (五七五) の中に景 (モノ) と情 (思い) をからませるのが基本である。
  今月の冠題 「見え隠れ」 は叙景だけで無い心理的な意味を含む冠題だから、 少し扱いにくい冠題と言えるが、 選者としてはあくまでも流動的でワクを造らず、 作者の訴求とか感動に対して耳を傾けたつもりで有る。
  次に 「断われず」 の場合は原則として断わる事が出来ない自分の心理的な弱さをモノに託して詠むのが原則で、 時には頼まれた事柄に従うか逃げ出すか?が問われる。 此の点、 会員欄の大川さんの句は実に冠題の心理の核心を突いて居た。 また同人の夏原さんの句も其の読みの深さに感銘した。

思えば冠句とは愉しい文芸である。

次に同人、 片山晃一氏の九月号塔映集作品が選考に洩れていたので、 お詫びして此処に掲載します。
   


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