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優秀冠句

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2005年7月

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秀  句  鑑  賞
影を抱く 花の背後の闇温し 京 都 滝沢 茂樹  ▲戻る
  「評」華やかな奥にある闇の暗さを温しと詠み止めた付句に、 愛に寄せる複雑な女ごころの綾が、 印象派の絵を見るように描かれ、 音もなく散る花の歎きが林芙美子の小説「浮雲」の序、「花のいのちは短かくて苦しきことのみ多かりき」を思わせる。
影を抱く いとし嬰返す遠こだま 名古屋 中川 定子  ▲戻る
  「評」逆縁の悲しみは老いるほど深いが、 いとけなき嬰(やや)なればその哀しみも切ない。 追慕の中七に「遠こだま」と詠む座五が良く、 さながら亡き子が生き返って可愛い声で返事をしてくれる。 親なればこその愛誦句と言えよう。
旅なかば 轍の中に未来秘め 但 馬 藤原 萬郷  ▲戻る
   「評」 久佐太郎は「冠翁忌 わがあしあとに耳澄ます」と、 自分のあとに従いて来る弟子や後輩のこと、 己が進む道が果たして正しいかを問い掛けた。 この句は進むべき道に未来があると断定する。 それはまた作者のゆるぎなき信念なのだ。
旅なかば 残像よぎる遠あかね 京 都 増田 美知 ▲戻る
   「評」冠題を小説的な着想で対応した句で、 女がたどる道を旅と見て、 去りし日の愛を「残像よぎる」と吟じ、 夕焼け雲の赫さに己が心を重ねた真情が優しい。 終る日を持たぬ旅ゆえに今日あることを感謝し、 心ゆたかに暮らしたいと思う。
影を抱く
生きた歳だけとがめ負う 長 浜 西沢 守男 ▲戻る
  「評」輪廻転生と言うが、 影を過去の罪と詠むからには犯せし罪は余程ふかいのであろう。 思えば悩み多き人生に寄せて、 深い思念を吐露する作者があわれである。 このような場合、 私達は信仰に依って救われるが、 作者は果たして如何に―
影を抱く わが原罪を敵とせず 西 宮 福島  旭 ▲戻る
  「評」作者は信仰を説く聖職に在って、 イエスの教えを我が言葉として熱く語り掛ける。 人が犯せし如何なる罪や悩みでも、 それは敵でなく、 むしろ救いであると詠む。 前句もこの句も生きんがゆえの知恵であり、 影はいつしか愛に変身するのだ。
旅なかば まだ鳴らしたき鈴ありて 長 浜 宮地 忠子  ▲戻る
  「評」遍路の旅とか或は自分の心の遍歴を主題とした句だが、 句中の鈴は心の奥に鳴らし続ける慕情とも解せられる。 流麗な声調に冠句が持つ抒情が汲み取れ、 作者の生き様とか濁りなき愛、 ひたむきな心情が美しい余韻となって鳴り続ける。
 
  今月の冠題「青葉濡れ」は緑したたる光景と、哀切の思いを秘めた情景とに分けられて秀吟多く、「さりげなく」と比べて格調も高かった。一方、「さりげなく」は深い意識を隠す着想を前提とするので、創作に際しては案外テクニックを要し、事柄の説明に終始した句が多く見受けられた。
  さて、五月の「冠翁忌」が終われば次は恒例の「久佐太郎忌」を迎える。別掲の案内通りに催し度く、句友各位の惜しみなきご支援をお願いして置きます。
  松 風




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