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優秀冠句

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2005年6月

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name013 name012 name011 name010 name009 name008 name007 name006 name005 name004 name003 name002 name001 松尾松風 主幹薦





秀  句  鑑  賞
青葉濡れ 叛逆の眼の遣り場なし 宇 治 住澤 和美  ▲戻る
   「評」大自然のいとなみには嘘も隠しもないが、人間社会は欺瞞や虚偽に満ちている。それは時に人をおとし入れたり、叛逆の行為をとらせるのである。だが結局は己れの弱さに気付く日が来るのだ。反抗期と言うには許容出来ぬ作中人物の奥に、作者の居直りの精神が鋭い声調となって響く。
青葉濡れ 湖底の村も春祭り 愛 知 前田 八州  ▲戻る
   「評」冠題と座五の季語とが重複するが、春祭りを主題として、人造湖に沈む村に寄せる愛着の心を懐かしく回顧する心やさしい句。湖面すれすれに茂る樹々のみどりも美しく、鎮守の鐘や太鼓の響きが郷愁をかき立てる。
青葉濡れ 家風に馴れぬ娘の電話 長 浜 川瀬 正子  ▲戻る
   「評」蝶よ花よと育てた娘がとついで早や幾月。お互いが好き合っていた仲でも、それぞれの家風や生活の違いによる違和感が電話のなみだ声に汲み取れ、親の胸を締めつける。窓越しに五月の雨が樹々を濡らす光景も涙をそそる。
さりげなく 意地張ることも生く証し 彦 根 柴田喜久三 ▲戻る
   「評」老ゆると人はみな意固地になるが、それは自己の存在を無視されたくないと言う、哀しい抵抗の姿でもある。作者はみずからの真情を吐露しその淋しさを秀句とした。愚痴は愚痴でなく立派な詞芸となって私達の共感を誘う。
青葉濡れ
踏み出す一歩まず初心 京 都 福野 一美 ▲戻る
   「評」春は卒業や進学、そして就職に転勤と人が移動する季節と言えよう。作者は誰が何をしたとか、どうなったか?を句材とせず、人としての在るべき姿や心掛けを「まず初心」と説く。張りつめた声調に確かな信念が表れていて、明るい未来が展開する。その前途は洋々として果てしが無い。
さりげなく 本音で点す夫婦の灯 舞 鶴 飯尾規代美 ▲戻る
   「評」結婚の在り方も時代と共に変わって来た。夫唱婦随がいつの間にやら婦唱夫随になり、言い度いことを言っては離婚する時代、思えば昔が懐かしい。句意は説明の要なく心情の美を座五で浮き彫りにした実相の句。表現も完成。
青葉濡れ 未完の慕情彩冴えて 長 浜 松波 つや  ▲戻る
   「評」冠句の抒情とロマンの香り高い作品で、色彩感覚の点でも他句を抜く。特に座五のみずみずしい述詞に樹々のみどりがきわ立ち、祝福の五月を連想させる。麗わしきかな。
 
  今月の冠題「青葉濡れ」は緑したたる光景と、哀切の思いを秘めた情景とに分けられて秀吟多く、「さりげなく」と比べて格調も高かった。一方、「さりげなく」は深い意識を隠す着想を前提とするので、創作に際しては案外テクニックを要し、事柄の説明に終始した句が多く見受けられた。
  さて、五月の「冠翁忌」が終われば次は恒例の「久佐太郎忌」を迎える。別掲の案内通りに催し度く、句友各位の惜しみなきご支援をお願いして置きます。
  松 風




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