文芸塔

文芸塔社とは?ページへ 行事予定ページへ 優秀冠句ページへ 投句ページへ イベント報告ページへ 冠句のお誘いページへ バックナンバーページへ 問合せ先ページへ

TOP > バックナンバー > 2016年6月



優秀冠句




塔  映  山  声
松 尾 明 美

 冠句研究の機関誌発行『文藝塔』社創立は、一九二七年六月(昭和二年)である。その年のエトは卯歳の巡りで、また節分が二月四日の通年より、一日遅い略歴であった。翌年が閏年で四日が節分と続いた。本年閏年だが節分は三日と通年の暦で従って四日が立春だった。処で久佐太郎の生まれは卯歳でエトの干が違うが、創立は同じ卯の年である。それから八十九年目の本号が六月号に当たっている。そして発行日六月五日は、節気の芒種の日でいわゆる播種する時期の始まりを示す。創刊が七月号であって、種から芽と茎が立ち育つさまに、真に良く合った創立由緒歴だ。
 扨て、来七月号より担当を「塔映集・同人」欄に移り、この“作品評”を今号で了え、筆を擱くこととする。これ迄「塔映山声・巻頭吟・冠吟作品」と継ぎ、冠句評論・芸談寸感ともした。その間管見を読まれた方に感謝したい。

  陽と対す 到りつくべき山愛し 明 美
愛 す 道  詩囊をみたす泉あり 野 口 正 子 ▲戻る
 

 人の世を生き歩む「道」に、万物潤すに欠かせぬ「泉」を賛え、人生の旅心と暮らしを詠う「詩囊」の働き深く、豊かな語彙を培い「みたす」句心で、冠句の道「愛す」境涯が全うする。が言葉綴りを活かすことへの初心涵養と、そして詩の泉発見することの、常に怠りない学びが永遠。

遠明かり  帰船を待っている港 沢 田 清 敏 ▲戻る
 

 大島、波浮の「港」の光景情感を蘇させられ、またポップスの“眠れる入江”の調べを浮かべる。未明も早く出船し豊漁の舟脚で「帰船」する。厳しさと静穏な和み湛える海景を背後にした、懐かしみと活気の“映りと匂い”を、作品意図と別に筆者は感じた。ie音で畳む語感余韻響く。

愛 す 道  花の切り口滴りて 高 岡 ひろみ ▲戻る
 

 野の自然にある姿を器に挿し活かす、折々の四季「花」の水際立つ景趣の美。思い籠め茎の「切り口」鮮(あら)たに断ち束ねる、植物の瑞々しい息吹の「滴り」への歓歎詠。特段なモチーフでないが、手にした一瞬の感偶の描き利く。

HOMEへ戻るボタン



Copyright:©2005-2017 bungeito-sya All rights reserved.