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優秀冠句




塔  映  山  声
松 尾 明 美

 冠句を作句する道の本道は、人生の季節・生活の感慨・世情の風景を詠う道で、その道の往き来で遇う機微に、柔らかで句心ゆたかな感受性と、デリカシー(繊美で品位)で詠み描く、人間性を芯にその哀歓の抒情が本質である。そして一句は、起・承・転結の立句の独立吟で全うする。つまり、その道を外れた処の情景・叙事・説明吟は、冠句文芸とはいえないものとなる。これは冠句創始より不易。久佐太郎が冠句始祖を世に声明の、冠翁の忌がこの五月、没年祥月日も明らかで、大系確立しているがここは省く。

  冠翁忌 痩骨鳴らし起たんす 久佐太郎
  冠翁忌 天地を洗う風青し 早川桜月

 以前両師の時代は、誌上作品は選句発表で久佐太郎選は、採句厳選で掲載発表を真に待ち望んだ。永らく絶えていたが、本年冠翁忌制定より八十三年、没後より二八八年に当たり、例月誌上作品と併せ、祥忌五月に選句掲載とした。大会の献句ではないので、心耳白くして光る作品を推す。

冠 翁 忌  わが眼差しの届くまで 浅 田 邦 生 ▲戻る
 

 旧友の遺作品に、冠翁忌 鎖の継ぎ目光り合う があった。感受性の利く目線で捉えた光りが届いた。この作品にはデリカシーの「眼差し」で以て、遠く長く奥深い境地へ「届く」句心を詠む。至りへの尽くせぬ詩情を「まで」と切願し、及ばぬ想いの「わが」道を見凝めた精神風景歎。

潤 む 胸  艶まだ残しいる剝製 小 森 冴 子 ▲戻る
 

 野性の生きた姿態を狩り「剥製」にした獣類を賛歎。決して目新しいモチーフでなく、多く詠まれ筆者も描くが、獲られて新鮮な「艶まだ残しいる」全容感に、感じ易い女流人共通の心情表現がある。何か驚きの視座で謂う感慨。

告げる音  春雷に胸弾ませて 加 藤 直 子 ▲戻る
 

 寒冷前線の気象で起きる界雷を「春雷」といわれ、短いが現代のは突風と雹被害激しい。然し予期せぬ雲模様にもときに、音感穏やかさに軽く「胸弾ませる」のも、春に興じる女の情の一面で、こまやかさを通した機智との共鳴。

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