文芸塔

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優秀冠句




塔  映  山  声
松 尾 明 美

 ―“一隅を照らす”―、比叡山根本中堂に開基、最澄の献灯した「消えずの燈明」理の言辞。 京都の東北に聳え宗教史に名僧輩出した名本山。千日回峰行巡りと九日間不眠と不休で、堂籠もりもする厳しい行法ある、天台の本山。
 連峰で都の鬼門と鎮護する山容、美しく際立つが姿の形状に、谷深く巡る道折れ続き森林高く、山入りも厳しい。東の近江からと洛東八瀬から、 現代はケーブルで上れ山上に観光遊園地もあるが、南紀高野山を開いた空海が、先の最澄に返書した、名筆「風信雲書」によれば、 空海は比叡に登っていないように筆者は思う。京都盆地を眺めた将門岩も遺る比叡と、高野山の台地に広がる慰霊碑や墓石群、宝塔寺院を抱え建ち全域が町並みの、 景観は真に対照的。両山に宿泊の体験を持つが、食で胡麻豆腐の高野が良い。中国から伝わって日本佛教の基と、和食に欠かせぬ豆腐・湯葉・醤油・茶・紙、 日本の食・文字・習いの学び太い。冠句文芸も深く広く太い芯に、句心の灯が消えぬ学びを。

  山路ゆく 朝を総立つ針葉樹  明 美 

清らな火  男のしるし赤ん坊に 三 村 昌 也 ▲戻る
 

 現代は妊娠期から性の区別が判るが、産まれた「赤ん坊に」生(な)り余る「しるし」の、 象(かたち)有つ「男の」無垢歎美。古事記にめぐり合わせが書かれ、聖書やその名画にも描かれている、童形をこよなく感じる視線が窺える。 人躰の特徴の極く当然で、筆者も「鉾もち」と詠んだ旧作が甦る。

海 落 暉  生涯無冠の冬花火 赤江橋 くにゑ ▲戻る
 

 四季を通し毎夕燃える「落暉」と向かい佇ち、人の「生涯」観を見凝めている。生きざま過ぎ来し方を「冬花火」の、 一瞬のきらめき美しい眺めに人生を懐旧、栄誉と縁ない「無冠」の姿を自問詠、必ずしも薄徳でない老成境地。

清らな火  雨後の町並み昏れ初むる 滝 沢 茂 樹 ▲戻る
 

 一読物寂びた各地にある城下「町並み」の、独特な「雨後の」情景が泛かぶ。洗練されないが鄙びた「昏れ初むる」と、 u音続く詠みの中抒情の奏でが聴こえる。その町に住む庶民の心の「火」が呼吸づき見え、心惹かれる景。

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