文芸塔

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優秀冠句




塔  映  山  声
松 尾 明 美

 〈新たしき年の始めに降る雪〉だった、昨年とは異なり三ケ日、好天で穏やかな正月であった。今年一年吉き事多く、 句作の楽しみ深め句境一段向上を、作品評の初めに期待と希望をし、筆者のことば開きの筆の運びに思念する。家持の歌の意と離れて災害が、 多くあった去年を心に刻んで、句の道にとり平らかでいて、向上心怠らぬ祈り道(いう)。
 冠句文芸の道は詩性心情を道(いう)世界、叙事信条を書く道で無い。冠句の句心について初心忘れず、初心高める工夫と、その極意へ向かう一段上目指す、 良き目利に学ぶが最善。

声鳴く鴎  人恋う岬風花す 藤 原 早百合 ▲戻る
 

 海浜離れた湖と周辺河川に、冬渡って来る都鳥百合鴎と、海洋の港に留鳥の鴎は大きさ種類違うが、 晴天「風花す」る日の舞い「鳴く鴎」は、後者で列島に多い景趣。特段でないが「人恋う岬」の情景に、さりげない描写にも、 想い憑かれ佇つ心情が窺える。前出都鳥は京都市内も風物詩的に眺められ、声に人心誘うもの見“淋しくもあわれ”響く。

募る思慕  五体を野火の移りゆく 住 澤 和 美 ▲戻る
 

 春への刈敷や害虫駆除に火を放つ「野火の移り」を、自ら「五体を」拡がると捉え、女のとりわけて生理感情に喩え、 思い「募る」燃え盛る心理感覚で詠う。山火や焼野景で古歌に詠まれ、奈良の山焼は代表風景、その後の末黒さに万目蕭糸の感を覚える。 自然への働きと「思慕」を併せ、硬質な神経を伝わる熱い気息を描き込んだ、孤独の讃歎。

募る思慕  私を乗せた乳母車 秦 谷 淑 子 ▲戻る
 

 一読誰にも通じる懐旧光景で今も現存か別に「乳母車」への、遠くして過ぎた日を追い「私を」特にかは知らず、 生母が「乗せた」感触を新たに呼び起こしている。素材は現在はカート式だが、籠形の持つ和やかで馴染み親し、その優しさが将に母への「思慕」を強める。 類型を思うが詩人の“母よ-私の”で知られた情愛に通ず、人の愛普遍。

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