国宝の等伯画『松林図』屏風は、一見して気品の韻きが聴こえる。狩野派繪畫に対して苦難に克って描かれた、
謂われが伝わる入魂の名品として評価高い。文字“品”の意は、物を仕分け、値打ちを表わすところから、品位・人品・品格などに用い、
品定めや性質いわゆる“がら”を示す。
申楽の条に「精勵出だせば……肝要の立合、大事の勝負に、定めて勝つ事あり」と訓えている。等伯の画はその大用で、また道の総べてに通じまた、
その品位は自から備わるもので、初心を忘れず道をゆくことに尽きよう。相撲で名横綱双葉山の連勝を敗った、安藝ノ海は後横綱を締め、伎倆品位も優れて名を馳せ、
筆者の好んだ力士であった。
芸能文芸もその内面にある“品性”が大事で、冠句性の句品が匂う処が無いのは--見とめおさまることなし--に。前号の噺の“天狗さし”も“念仏さし”で、
納得する噺。出典知られてない落語の筋も、冠句性尺度で判る句心肝要。
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