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優秀冠句




塔  映  山  声
松 尾 明 美

 国宝の等伯画『松林図』屏風は、一見して気品の韻きが聴こえる。狩野派繪畫に対して苦難に克って描かれた、 謂われが伝わる入魂の名品として評価高い。文字“品”の意は、物を仕分け、値打ちを表わすところから、品位・人品・品格などに用い、 品定めや性質いわゆる“がら”を示す。
 申楽の条に「精勵出だせば……肝要の立合、大事の勝負に、定めて勝つ事あり」と訓えている。等伯の画はその大用で、また道の総べてに通じまた、 その品位は自から備わるもので、初心を忘れず道をゆくことに尽きよう。相撲で名横綱双葉山の連勝を敗った、安藝ノ海は後横綱を締め、伎倆品位も優れて名を馳せ、 筆者の好んだ力士であった。
 芸能文芸もその内面にある“品性”が大事で、冠句性の句品が匂う処が無いのは--見とめおさまることなし--に。前号の噺の“天狗さし”も“念仏さし”で、 納得する噺。出典知られてない落語の筋も、冠句性尺度で判る句心肝要。

  一ページ 父に始まるわが家系 桜 月
声 浄 し  銀ぎちぎちと霜の花 中 川 定 子 ▲戻る
 

  一読、作品にセンシビリティ(感受性)の、引き緊まった歩みでゆく情景が泛かぶ。 冷え込み急に師走入りの十二月、本誌一月号編集了えた処だけに、擬音「ぎちぎち」とが読み手として響いた。 地道少ない街では「霜の花」も、眼にいや足元にしないが、霜夜の声を「銀」の捉え効く。

或る一夜  悔恨に雪降りしきる 松 浦 外 郎 ▲戻る
 

 昔児童の頃ふしぎに義士祭日雪を見た。昨今雪舞い凡んど無いが、昨浅春伊吹山の雪深さに私は瞠目。 作の「雪降りしきる」を、その伊吹の気象に因ると解すと、想像景でなく迫り来て「一夜」の旅懐に重なる。 耳澄ますと音無きに人様々な、胸燃やす旧懐もありその情(こころ)の「悔恨」は、強ち虚しさのみでなく、人に普遍な記憶の哀切さも含もう。

声 浄 し  美しかった小津映画 竹 内 そのみ ▲戻る
 

 永遠の神秘で称された、女優原節子主演映画「美しかった」と賞賛。 監督「小津」の描いた物語を、筆者も心に浮かべて、京や奈良を背景物語を懐かしむが、その他、尾道・東京・大阪で撮った数々の場面で光った美貌、 台詞の声音のよさを、一纏め印象美しと憶い語った、正しく伝説美。

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