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優秀冠句




塔  映  山  声
松 尾 明 美

 冠句文芸の本質は、詩情を詠うことでその良し悪しは、冠題の上五句を活かす、下十二句の詩趣との“間”合いにあるといえる。 文芸芸術世界で“間合い”が、効いてなければ唯ごとの読み下しで、人の琴線に触れていかない。作品の詠みぶりで、まず眼にしてみても、口に乗せてもそこに、 一呼吸の間合いがないと、読み手の心と眼によく分かり難いもので終わる。冠句は、その一句の“ことばつづき”が、心地よくまた目に明らかに見えて判るに尽きる。

  走 馬 燈 五十すぎての早いこと
  霧 青 く 奥へ奥へと山法師
  父と子と 信じればこそ言葉なく
  雲灼ける こんな日だった友の爆死は
  水たまり 余生を燃やす梅雨茜

 どの作も、一読心に目に浮かび来る詩情が明らかな詠。作者名を記してないが作句者を離れて、生き続けている。作品は詠人の個性と質で生きながら、人の琴線を鳴らす。

白 表 紙  祝の一文字紅にこめ 川 口 未 知 ▲戻る
 

 ハレの場で目録や贈る人への「祝」いの光景で、目出度い儀式に用いる「紅」の鮮やかさと、手漉き和紙に書かれた「一文字」の、 大きく墨の香も立つ楷書体が泛かび見える。結び飾りの荘重も伝わり、心「こめ」た感慨が明白なかたちで、描詠されている。句材殊更でないが典型な譚。

白 表 紙  無雑作に事故葬られ 橋 本 信 水 ▲戻る
 

 現代社会にとりわけ昨今多い「事故」の悲嘆さと、ある裏腹なその処理作業終わる批判詠、 複雑微妙な処が「無雑作に」単純に済む工程哀嘆。実際は「葬られ」るのは尠いが、見えて居ない裏面のあれこれも、当該者を離れて行う現況に、 この場合直截で憤りを吐き出したような作品。

凭れ合い  ハンカチ白し初夏よ 鞍 谷 弥 生 ▲戻る
 

 読み下して、モチーフの印象「白し初夏」が、心理性と感性の明と爽快を伴って描き語りを伝えている。 詠み出しの「ハンカチ」は、日常平生の暮らしで手離せないもの、特に女性では身化粧と、ファッション性の必需品の一部。 句趣多い中気心と触れ合いを、機智効かせた主情詠得心。

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