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優秀冠句




塔  映  山  声
松 尾 明 美

 人工知能ロボット「ペッパー」は、対手の人の気持ちを読み取り、身ぶりを入れて会話し一緒に情(こころ)を交わすとか。 人工知能が格段の進歩をし、すでに各所で人間とおなじ働きをして、その賢さで読み分ける早さに、真に驚く限り。 然し、人の表情や表現の“尺度”を測るところが、もし違いずれが起きることを想うと、容易に惧にはなじめない。 昔は測る寸法が東西で異なってい、都京師では「念仏尺」が正しく、広く評判よく信用得て使われていた。 旧い上方落語に「天狗さし」の噺があり、その下げに「念仏さし」が付く。冠句を作す人にはよく胸に落ちる、噺の下げの話。

  冠翁忌 ここらで当てよ念仏尺  久佐太郎

 冠句始祖堀内家が営んで名高いのが、この「さし」で現代に遺っている物指。冠翁忌に因って判る理解ではある。 つまり、唯作句数のみ集まっても、その正しい“さし”が無ければ、目利き処や立ち居の場が見えなくなっていく。そして、感性品性は人工知能でも培えないと、思い至る。  -所詮、位・長とは、生得の事にて、得ずしては大方叶ふまじ。-(風姿花伝)

想 い 切  昏きからだに青あらし 中 川 定 子 ▲戻る
 

 社会人口高齢化に向かう傾きの中、自らの「からだ」もたそがれの「昏」さに入った感懐。 季、青葉茂る清爽な候に「青あらし」の強い風が、躬の内を吹き渡る想いに、なお一入深く躰に至った詠嘆だ。女の生理感で捕らえた哀切。

想 い 切  子に恵まれぬ背が軋む 小 森 冴 子 ▲戻る
 

 そしてこの作はおなじ女の身の、生涯に「恵まれ」なかった、け遠い心懐で「子」への姿を憶い描き、 加齢の「背が軋む」実感で表白している。痛みを感じるのは男女変わりない情だが、より深い念(おも)いを持つ愛情の表れがある描詠。

馴染み店  乗り継いで来た海の風 川 口 未 知 ▲戻る
 

 瀬戸内へは交通利便だが、山陰と太平洋側は「乗り継いで」の旅程となる。 季節の旅先の楽しみに内陸にない「海の風」の湿りと、潮の香が心に沁み旅懐の、疲れを和らげ落ち着かせる。案内知る「店」のもてなしが窺える詠。

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