文芸塔

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優秀冠句




塔  映  山  声
松 尾 明 美

 旅で空を航くより、船で渡る方が心にロマンを感じるのは、昔はそれが旅であって、 宿泊と言うのは船で停泊して行くことで、現代も用語として書く。船では帆船が更に優雅で、かつてその貴婦人と称された海王丸が引退し、 富山湾の新湊に繋留している。帆柱の船姿も心を惹きつける。筆者は外洋を渡っての三宅島への経験で、内海航路よりもやはり気分が優った。 舞鶴湾で自衛艦試乗体験もあるが、帆船で夕陽に映ゆ湾へ向かい、ポップスの歌景〽夕陽に赤い帆 のメロディーに乗ってみたいと、港の景に想った。

 舟着場 マストばかりをみて帰る 桜 月
 夢群青 一本の櫂削り上ぐ 明 美
淡 い 仲  人妻が言うもう春と 鞍 谷 弥 生 ▲戻る
 

 兄弟での二番目が仲で、取り持つ仲人などの字義あり、人の交わりの間で「人妻が言う」挨拶に、 対手に伴侶がある生活背景の楽しさが言外に潤う。漸くと感じている者に「もう」と、はやくも身辺りに「春」を満喫しての表情が窺われ、 女同士の情の機微が泛かぶ、温かくも切な感。

密な日々  巨木寂かに終えんとす 橋 本 信 水 ▲戻る
 

 近郷で樹姿極立っていた「巨木」であろうか。風雪災禍を耐えての樹齢測り難い樹が、 眼にも「寂かに終えんとす」枯れ朽ちる光景である。大自然の働きも「密な」なかに、山風の冷厳さと陽と水の無心な理を、感じとっての詠いぶりだ。 唯実景ではなく心象性の景で人生の譬えも含もう。

密な日々  花で埋むべしこの余命 松 浦 外 郎 ▲戻る
 

 これはその人生多情多彩陰翳隈どる「日々」、老いての残りの「余命」を、来し方に咲かせた「花で埋むべし」と、 憶いを切に籠めての心境。色褪せ易い花容を忘れず在りたいとの、むしろ自分の孤影ともの淋しさを裡に、平生の日々叶い難いもせめてもの、 心念(ねが)いの感偶を語っていよう。

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