TOP > バックナンバー > 2014年12月
文芸世界は、その興に一心に打ち込む面白味に尽きる。その処が“神との遊びの魅力”の神妙で、 神髄と謂える。また、ことばは言霊でその響きの力で、神も人も動かす。つまりは、熱中する処が文芸で、片手間ごとは通じない。 心を打ち込んだ撞木で鐘を鳴らす、その渾身力がこの道。
想い断つ 竹伐るひびき天辺に 明 美
秋から冬の平常食の中だけでなく、四季通じて用いられる“根菜”でも、 余り主役でない「牛蒡」の「匂い」を、作品の主に据えた市井の生活情景が利く。粗雑に扱われ牛蒡抜きの語もあるが、 晩秋の炊き込み飯は筆者も好む味。
今年は気象が荒々しい感じに、この「山に風無く」の静穏さが、作句のひねりもない単純さにも、 外景の大きさを淡々と捉え、うしろの山と眼前の「夜景浮く」美しさが、小休止した叙法により、自然で柔らかな感懐を表白した。
受け取りようで一見句境離れた感じだが、意識を改めて「膝を正せば」心根にまで、 緊き締まった「音冴えて」届く感銘と、心動かす閑かさ興趣に入った姿が伝わる。静と動の理屈ばった意(こころ)でなく、目と心の揺れ止めての精神歎。