TOP > バックナンバー > 2014年9月
『文藝塔』誌は、“冠句研究”を標題している。創始者久佐太郎は本誌によって、 正風冠句としての文芸革新を行うことと、文学史で知られずに在った、始祖を初めて明らかにし、文芸復興と普及に生涯尽くしたことで、 今に及んでいる。冠句文芸は、正風の志を究め広やかに詠み、作品発表することにある。研究の精神(こころ)忘れずの句心を書こう。
酷暑続きの日々に、氷塊を「削る」作務の人の姿を、描いて「いのち」在るものを、 剥り出すかに詠歎し讃えた。「像」はアートとして現出し、涼感と共に感銘を伝える。
現今「蟄居」の武家の刑罰語は用いることないが、差し詰め「雨一日」を家に籠もる、 無用の“閉じ”込めぶりが詮ない生活の暗澹さで、市井人の心境感傷を刺し貫いた。
対して、童謡懐かしい光景の「待ちぼうけ」を、薄暮迫る外景気分に「歌うたいて」と、 主婦らしい情感に小市民の或る断片を、切り取っての哀歓が「は」に出て、利く。