TOP > バックナンバー > 2014年7月
冠句文芸は世界最短の叙情詩で、そしてとりわけ付句十二字によって、 作者の感動の句心を行じ上五句(冠題)に息を吹き入れ、二句十七字音に活かし成ずる世界である。 したがって作品は事柄を書くのでなく、情(こころ)を詠む文芸で、また題詠の姿をとる冠題詠と、自由吟詠を併せた世界(ジャンル)だ。
これ迄に多い「バラ開く」光景で、薔薇ノ木ニ薔薇ノ花サク、 ふしぎないことを「音ふと聞」く想いに、感興のデリカシーが働いて、色彩明るく匂やかな風情雰囲気の、観賞力も純心。神経細やかな欣びを伝えた、凡でいて明敏。
これは人生の終わりに際し、その弔祭の花の「彩黄と」希って、現世と「惜別の」すがた、 言辞のかたちと「決める」挨拶。作者に珍しい感嘆詠で、黄は広く高みの象徴。
対して心情の叙べを「ゆっくり」と、こだわらずに「溺れ」てゆき、 朧げに限りないまま、あわあわした「春意」に浸る憧れの女の想いだ。それでいて言外に充溢の歎。