文芸塔

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優秀冠句




塔  映  山  声
松 尾 明 美

 人の世を生きる上で、短い詩句で暮らしの感慨の、寂しさや歓びきびしくて切ない、 感動を冠句することの目的は、自ら一人の好きに尽くすことだが、詠み表した一句がその手を離れ、読む人の目に留まり生き続けて、 作者の名は知らずに遺ることで、句作の冥利は命噴くことを知ろう。

   世(よの)間(なか)の 繁き仮廬(ほ)に住み住みて
      至らむ国の たづき知らずも  (作者不詳)

万葉人も長く生きて更に究めるすばらしさの考えを遺した。千年を超える以前の情が現代にも伝わることばの力を想う。

   今日のためと 思ひ標めしあしひきの
      峰(み)の上の桜かく咲きにけり  大伴家持

万葉集を編んだ家持がさくらを愛して祈った思い伝わる。朝の山ざくらの美しさに心も晴れる景は今日でも同じだ。 現代はソメイヨシノが好まれるが、山ざくらの景趣絶佳。

   ほの白し 散骨の地の冬ざくら   明 美

朝 微 光  いのちあらわに水の春 中 川 定 子 ▲戻る
 

 雪解けで奔しる清冽して尽きない「いのち」の「水」。 いま明けゆく外景にその象(すがた)を「あらわに」と観た感銘で、必ずしも目新しい境地でないが、 その情景の「春」の歓び思う詠みに、繊細で勁切な心情抽出があり、眼前に迫る。

朝 微 光  挨拶交わし居て夫婦 渡 邉 君 子 ▲戻る
 

 平生日常の始まりを、ことばに出し目合わす「夫婦」の姿で和ましい。 さりげなくして「居て」の親愛さを、気持ち込めていることに、更めて「挨拶交わ」す互いの清々しさが、 当然でいて行いを余りしない漢の側への伝心判る。

移ろう世  季が来れば季の花に会い 加 藤 直 子 ▲戻る
 

 四季の巡り確かな列島日本、春には春の「花」冬には冬の「季が来れば」、 各々の季節の便りに「合い」楽しむ。唯年々歳々相似る、花季が気象変動大きい昨今、 その「移ろう」すがたが、乱れる感に自然の光景への慮り考える。

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