TOP > バックナンバー > 2014年5月
いつの時代も、清新な書き手描く人の登場で、芸術分野は拓かれていく。 俳諧では芭蕉でありまた、その貞徳門の堀内雲皷である。雲皷が始めた“五文字を置く”句立が、新しい詩型の“冠句”であり、 文献で初めて今日世に示し、「正風冠句」を詠み時代に興したのが、久佐太郎である。それから九十年目が訪れてくる。新しみを切り開きたい。 冠翁忌 ここらで当てよ念仏尺 久佐太郎 冠翁忌 わが灯芯のさだまらず 早川桜月
バッハ作曲のバイオリン演奏を、G線だけで奏すアリアの「身を寄せて」の共鳴感。 澄み張った“詩と叙情美”に倶に応え合って、生命の郷愁を求めている、心境見える。
時代は変わっても、女人が「終世の華となる」情(こころ)を望み持つ想いは渝らず、 万葉浪漫性がいまに通じている。美しく烈しくして、濃密で柔らかい本然な姿を語っている。それは、恋と愛を直截に叙べつつ、熱っぽく欲す念いだ。
対して、必ずしも生涯長く留まらなくも、意(おもい)の裡に「玉響の」少しの触れ合いを、 深く思い駆り立て「呼び戻す」懐情に、細かな襞までを追う気質を出している。心理詠。