TOP > バックナンバー > 2014年2月
昨年積雪も多く北の国では、その吹雪による被災で車列停止の難で、 親が子を抱き覆って凍死の報道があり、白魔の怖さを雪にみた。吉(よ)き事多く重なれと、万葉の家持が元旦に詠んだが、 吉祥の兆しと正逆する雪の象に、この作は強烈なまで「飢え」の覚えを訴えている。飢餓の記憶と別な心の裡のもので、ひらつく感覚の「髄まで」が勁切だ。
極寒期に生じる湖面や海氷の「凍裂」を、想い描いている情景で、 神秘性と自然現象の厳粛に、心身「刺さる旅」懐を捉えている。神聖視される“御神渡り”が有名で、 また春先の“流氷”相うつ「音」の、光景句も多くあるが、作者の生活境涯性が含まれた処に、対者を欲す心境判る。
列島の四季は東西南北、多様多岐で“豊凶”相合わせ、輻輳して災禍も毎年起きるが、 作者が「諳んじる」栽培計画で、準備の楽しみと「農事ごよみ」のあれこれに、月月行い生じる作物の命の芽への、語り掛けがあり平常でいて無常の、 流転の集約が語ってある。その相に吉事重(し)けよ。