TOP > バックナンバー > 2013年12月
この号は十二月発行だが、選句時は“真夏日”がまだ続いている。 季節を勘違いして桜咲くという異変でいて、台風豪雨禍で「ご神火暮らし」の大島が、離島避難を余儀なくされた。 気象の災厄に水のすがたの巨と柔を今更想う。斯うした時、冠句詩型で新しい生活詩語を詠出させたい。
万葉時代は黄葉を謂い、平安期から「紅葉に」と詠まれた。 南北に長い列島で「九月の」それを観られた歎賞だ。猛夏で遅れ気味の今秋の外景で、 言外に嗚呼と感じ「触れて」の措辞が、今迄に無い嘆美さに「きて」と、感懐の揺曳をさせている。 作家の心境繊致で他郷での思いが映出。
枯淡な水墨景と観ると類似性を印象で了るが、冬を前の「日をふと怖れ」の悲嘆に、 心懐巨きな存在と棲む「山ねる」容姿への、愛慕心が籠もっている。その日と楽しみ来たときとの、境地離れる孤愁の断面を措辞した風景観だ。
もののいのち生む力と、方円の器に従う柔らかで、流れ止まぬ「水」が、 変貌して「人呑みし」となる自然の偉の「露見せず」を、人世(よ)と万物の反面悽愴な係わりの悲嘆。