TOP > バックナンバー > 2013年9月
冠句詩型は、十七字に上五音句を“かんむり”とし、 立句の姿も気品あるものとして、成っていることを示しており、その言葉の品性が作者の句心と相俟って輝く世界だ。 冠題の玩味と咀嚼のことに重きをおき、作品力を養おう。
衣笠山を背景に建つ三層の「金閣」は、義満が開いた鹿苑寺の池庭に映え、 四季に亘って美麗を尽くし極みない。この堂姿に「父思いおり」との感歎は、唯に父姿を懐かしむだけでない、 金閣再建に携わった作者の父への旧懐があり、金箔の光りも眩い景観の美へ、想いを勁切に籠めた。
崖を流れ落ちる「滝の速力」を観光しての、感銘の詠みだが「惚れ惚れ」と、 惹き寄せられる迫力と白い飛沫の美が、泛かび見えてくる。詠み多い滝の景に力学的な讃歎。
鍛冶の場景で相「槌を打つ」緊密な姿だ。玉剛を折返し鍛刀の「魂の音」を聴き捉える描写で、 炎と向き合い焼き入れにより、刃紋が放つ匂いと映りの輝きが、心に届く。
漁労の“海人”が吹き交わす「指笛」の音に、魅せられている感懐が「鹹き」の語意の如実さで、健全放ち得た。