TOP > バックナンバー > 2013年5月
冠句の骨法は、初五を発句に下十二音句を連吟圧縮の、起・承・転結詠で叙し、十七字に人生抒情を詠む結晶詩。口遊む言葉に無量でいて、調べ心よく印象目を惹く句境が響き、尽き止まず人心の琴線に触れ、愛唱に応える作句を。
春降る瑞兆の天からの便りも、今冬は豪暴風に荒れ「雪しまき」に、列島は明け暮れた。 心痛む犠牲者も出て大自然の畏怖を、目頭熱く感じ言問う想いを映じている作だ。夕闇が白さに見えぬ厳しい哀傷の心がごとの直喩で刻印。
弥生三月燕来ぬの詞と逆に、北帰する「白鳥飛翔の湖」景描写で、 つとした愛別の歎だが“大湊”など、去る姿への即物美を「瑠璃」沼との讃えに、心象景として一入(しお)さ。
海を渡りゆく疲れを「羽の重さに」捉えの喩えに、伝説性のロマンを籠めて、休める翼に人世に擬した哀傷の譚。
何か物憂い感情に「花冷えの夜は」の語りの単純さに、達治の“花びら流れ”を垣間見る想いの、淡々とした口吻。