TOP > バックナンバー > 2013年4月
現代冠句のありようは、印象鮮やか言葉の調べ良く意味の深さが、 人心の琴線を鳴らし記憶に残る作品に尽きる。冠句の五・七・五の十七字音に、天地人のつまり天文万象、 地理無窮、人事哀歓を詠みとり楽しむ、切磋琢磨の世界。
読み通して、自然感情の親しみと荘重で寂寥の相を、心改まって詠みとめ描き出した感歎を受ける。 立春後の繊い新月の出も遅く「渡る」光景に、粛条と「寒村」が枯れに在る暮らしを、的確に「離」の一語で捕らえた断定が利く。
今冬の雪積む深さは格別で、暖地で偲ぶにも痛酷な「故郷」だが、 その厳粛さで「雪のしろさに在る」感銘には、極寒冬季の国人へ無限にある愁いを問う、哀嘆が籠もる。
移りゆく外景に「神坐す」意(こころ)を想い、動かぬ「岩」に明察な姿を感じ観ている。重く硬い表現も孤絶な哀情出た。
豊かでいて冷厳な山村の「痩田五反」の労農観。無関心で済ませない日常の自然に、ある不安と無常の哀愁感懐。