TOP > バックナンバー > 2013年3月
今年初めて鑑賞文の筆起こしの日で、初春の淑気に雪舞匂うが、晴れ寒く列島各地積雪多いと。初春の雪は瑞兆と万葉集掉尾に詠まれているが、家持歌は将しく春正月一日現代の正月は未だ厳冬で、初春は言葉の上季感覚が違う。魁る春の兆しを想い描き、句品の響き聴き分け述べたい。
人の歩み出しから始まり道になり、その行く手は原初より「真昼の星」が耀く。 冠句はタテ句を通す格調と、句の姿の美を旨とする。大景に心境描いた平句でない色彩観。
野外に延びる単線踏を「一輛電車」が、灯光を薄闇に走らせている。 よく見る情景にここでは人寰(かん)塵埃鎮む、隠微温かな「夢宿へ」着く、心の襞の境を詠み安穏感恋うた。
前世今生と続く魂の行方、誰知れぬ理の「転生の世に」と、 観じて「老い迫る」憶い深める姿。人生愛憐の情歎。
誰(た)そ彼(かれ)どきの向こうに、想い揺らぎ「ひそと希い」佇つ、浪漫な女の面ざしである。 詩歌に多い心恋う息遣いの詠。他に「僧の声」慶一氏。「寒満月」未知氏に響く光の感興。