文芸塔

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優秀冠句




塔  映  山  声
松 尾 明 美

 正風冠句は「句心を磨いて真の高みにいたって、趣き深い印象をことばの響き輝く魅力で詠む」ことに尽きる。そして「句材の新鮮、感動の強さ、内面の美」を書く文芸。つまり、作者の心のありようと、眼目の据えようが全てであって、その楽しみのためのいとまを惜しまぬに尽きる。

  凍 雲 に 疎林応ふるすべもなく   久佐太郎

雪嶺顕つ この全天にいのち詠む 鞍 谷 弥 生 ▲戻る
 

 我が国の名峰は富士に尽き、冠雪の姿は霊美さ極まる。その山容を仰ぎ見て「この全天に」と、 大景簡勁に占める描写に、孤高でいて無礙な風光を思い映し讃歎している。雪嶺は富士に限定しないで、 モンブランを私は想像めぐらせた。遠く正しく澄み顕(た)つ「いのち詠む」心根が重厚だ。なお顕は、あきらかなしるしの輝き、きらきら立つ表れ。

朝 散 歩 白露零れて人恋し 篠 原 和 子 ▲戻る
 

 秋の爽涼さに往き馴れた道の辺で、つと思い揺れた「人恋し」さに、 平坦な地の光景での「白露零れて」感じ受けの微妙が、咲き乱れる千草の新鮮なさまを言わずして、 言外にくっきりと表している。野趣の景に寄せた人恋いは、よく見るが言葉飾らず、一呼吸で調えた感興が心濡らせる。

雪嶺顕つ 置きどころなき淋しさよ 高 岡 ひろみ ▲戻る
 

 大気清烈に充ち渡る日に、眼前に屹立の秀峰と向き「淋しさ」を覚えた、 圧倒されるばかりの美に「置きどころなき」迫真力の感嘆だ。四季見慣れている景も冠雪した山岳が起伏し連なる嶺の確乎たるさまに、 峻拒さを感じた心境。

朝 散 歩 この町に住み五十年 小 牧 稔 子 ▲戻る
 

 住み馴れ平生の暮らしの俗に、溶け込んだ何事ない「この町」への感懐で、 ありふれた驚きだが「住み五十年」の打ち出しに、家庭と周辺の生活臭も哀歓交々があって、 と振り返り歩く淡々さがある。平凡な感情の大みな表現。他に、「春を摘む」晃一氏。「大女優」紀美子氏に興趣を……。

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