今秋は猛暑日に加え夜もむし暑かったが、盆の月も名月も良く眺められた。
とりわけ、大震災と12号台風水害があっただけに、天の理に感懐を覚えての眺望であった。そして月光とともに、金星の輝きが一際美しく私には感じ見えた。
天文の運行の巡り合いの妙であるが、明星の瞬きが半月から下弦に移る軌道を、添うように在る光景が、何か浄く眼にしみた。
天地の動きには無常の想い深めるが、みじんも偽りない真理によると改めて強く識った。大震災を天罰と言った者がいるが地球上に起きる、天然の計らいには千年百年に災は生じても、天の理に間然する処無いと考える。
有るのは文明で生み出しながら、それを人知で制御できなくなる怖さを痛感することだ。
いまもまだ爪痕癒えぬ地域の怛(いた)みを考え、虫の音が聞こえ秋草や樹花が匂う風に、無常で無く風光と翅の弦歌を趣とする季節を愛したい。
白 と 黒 虹消えて海すでに秋 久佐太郎
霧 青 く 奥へ奥へと山法師 静 耕
朱唇燃ゆ 月に願えば逢えようか 流 峰
春 仕 度 暖流胸にたぎりくる 恭 子
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