TOP > バックナンバー > 2010年4月
故あって「小さき墓碑」を訊ね訪うことへ、思い立った勁切さが「一些事ならず」と吐露したのだろう。昨今は外国産石の艶光りした霊園墓石が多くなった中、その地で没した石に刻された文人を心親う感懐が、墓地の一景を凝視するように詠まれている。
中国地方や四国瀬戸内に「砕石場」が多い。○○産として一級の名石もある。荒々しくして整然と截り出される光景が、四囲の広大な光景と対比して「緑消しゆく」音響に、言葉巧まぬ描写で語られている。特段な叙法ではないが崖石の量感が迫って見える。
おなじ山容でも"里山"が「山の形に」馴染んだまま、今一日安穏に「昏れる」景趣である。審美的な美でないが或る穏微な心細かな詠みぶりに、作者の住地や住み心地よい町の景が伝わる。
有名な故事の一つを憶うが、これは作者の精神性や心理の綾を歎じた、境遇を「老いたる梅に」託して、一席の雰囲気を描き出していよう。ことごとしく言わず座のヒリッとした気を出した。