先師が、大砂辰一句集の作風に触れて「極めて精密に計算された、デッサンの確かさに発想した作品ばかりで、そのボキャブラリィの豊かさの奥に、ロダン的なマチス的なかっちりした、把握を掴めこれは作句の上で学ぶことがらであろう」と述べられた。以前にそのことは書き右の文は、一部省略して綴り直している。
ソーダ水 植物へ海が歩いてくる 辰 一(昭和26年作)
この作の叙法は、モンタージュ手法で成っている。そこに「作品の魔術の鍵はこの原型を掴むことで悉く解かれる」と、先師は言及していて、冠句界全般のレベルが高まっていると言われた。この句の評釈は省くが俳諧の圧縮詩型に因る、主要な作句方法として、連句に於ける"映り・匂い・俤・衝撃"法と共に、句境の"飛躍・展開・帰結"する"広がりのある付合いの妙"の美を、追究する作句の楽しみも行うことが、現代冠句では大切である。
冠句は、貞徳門流の復興の句立てとして、行われたのであり所謂"談林俳諧"とは、劃した句境つまり平句で無い「誠の俳諧」の道に立つものであって、単に付句のみの面白味に籠もるものではない。連句芸術の新しさはモンタージュ表現法により生じる。その「判り易く奥深い」印象描写の抒情を創る愉しみをしよう。
詩と小鳥 丘は少女の春にして 久佐太郎(昭和26年作)
福知山の疎開住まいから、京銀閣寺畔に転居後の生活環境変化にも、連作ポエム創作心を映じた句位正しく明るい二重写(オーバーラップ)の句。 |