冠句はいわば、タテ句の完成に句心を鎬ぎ合うを以って最とすると謂える。その故に句の格調の高さ表現の誠、そして句材境地の新しさに加えて、句姿の展開帰結が正しく独立し深いことだ。むつかしい述べ方にきこえるが、冠句の作品は連吟の圧縮だから一句のすがたに、更に脇句次句と続く内容のあるのがいいと云える。つまり"一句読み切り"で終わらない、転結のある作句だ。それには、自作を平句にしない意識での創作が最も大切であろう。
緑濃くカメレオンこっち振り向く貞之助
空寒し白樺削る君だった純 人
頼信紙ディートリヒに似た女二 竜
浜ホテル灯は一つまみほどの漁村流 峰
霧青し奥へ奥へと山法師静 耕
昔の作品だが今も「心に忘れ得ぬ」句として活きている。他にも、先師や桜月先生の句など胸にあるが省いた。賞翫をのぞむ。 |