文芸塔

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優秀冠句






秀  句  鑑  賞

 冠句はいわば、タテ句の完成に句心を鎬ぎ合うを以って最とすると謂える。その故に句の格調の高さ表現の誠、そして句材境地の新しさに加えて、句姿の展開帰結が正しく独立し深いことだ。むつかしい述べ方にきこえるが、冠句の作品は連吟の圧縮だから一句のすがたに、更に脇句次句と続く内容のあるのがいいと云える。つまり"一句読み切り"で終わらない、転結のある作句だ。それには、自作を平句にしない意識での創作が最も大切であろう。

緑濃くカメレオンこっち振り向く貞之助
空寒し白樺削る君だった純 人
頼信紙ディートリヒに似た女二 竜
浜ホテル灯は一つまみほどの漁村流 峰
霧青し奥へ奥へと山法師静 耕

 昔の作品だが今も「心に忘れ得ぬ」句として活きている。他にも、先師や桜月先生の句など胸にあるが省いた。賞翫をのぞむ。

風に寄す ポプラに遠き日を語る 浅 田 邦 生 ▲戻る
 

 ラテン語で"人民"の意で公園や校庭によくあった「ポプラ」。私の母校にも有ったが昨今少ない。喬木直立性の強い樹姿に「遠き日語る」独白に、そよぐ葉容への清けくも著しい印象美がある。

街歩む 子を抱く父のなんと若し 鞍 谷 弥 生 ▲戻る
 

 子への親愛は万葉歌にもあり古今普遍性で、讃美と祝福の歓嘆を、作者は「父のなんと若し」と勁切で、直截な描写力で描き出し、生命感の翠滴るような姿を語り得た、口語破調が効いた句。

風に寄す 墓参のほかに帰郷無く 松 浦 外 郎 ▲戻る
 

 生地の累代墓で守る親族が在るのだろう。従って「墓参のほかに」でも、心情に懐かしみが出て「風に寄す」思郷感も故深い。

街歩む 暗渠を流るわらべ唄 杉 本 順 保 ▲戻る
 

 市街地の河川は多く暗渠化され親しみから離れた。京の「わらべ唄」に遺る現象に、作者の懐旧の情が満ち流れた都愁がある。

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