文芸塔

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優秀冠句






秀  句  鑑  賞

 桜前線の早い北上の後、 椿・つつじ・山吹・牡丹・石楠花などと、 相次いで例年になく早い花容を目に出来る中、 気象気温は寒暖差が大きく、 四月中に京都で29度を記録して、 衣服も夏の半袖に替えたところ、 翌日から寒の戻りのような冷えこみと、 春しぐれのうすら寒さと、 陽気入り混じる変調著しい晩春の日々である。 この号発行頃は走り梅雨もあろうか。 桜月先生の句を思い出す。
     水たまり余命を燃やす梅雨茜 (昭和47年作)
  早川桜月先生は、 絵もよくされ 「句行画賛」 一如の感が深い。

浪荒ぶ 父にそむいた悔いばかり 高 岡 ひろみ ▲戻る
 

 誰人にもある 「そむいた悔い」 への述懐で、 詠み古されているとも云えるが、 女性の作者の父と娘の関わりを想像すると、 何か男子との葛藤とまた別な、 愛情をそそがれながらその温かさに、 逆に 「父に」 反撥した心情の揺れを感じる。 含む処も多く深い。

物淋し ふっと土葬を憧れる 大 橋 広 洋 ▲戻る
 

 アカデミー賞映画"おくりびと"が評判だが、 つい戦後暫くまでは 「土葬」 もあった。 一族同じ地に生き死にすることは人として自然で、 そのぬくもり無い現代事情が 「物淋し」 いと言える。

浪荒ぶ 男の椅子は一つだけ 東 城 達 彦 ▲戻る
 

 眺望宏大な景観で 「オホーツクの雲」 と、 感動も伸び伸びと打出し、 気候風土のエキゾチックな様を 「あとさき」 と、 捉えて国境遥かな感じを余情している。 極北の地の遠い見晴らしがいい。

物淋し 足袋の福助笑み伏せて 鞍 谷 弥 生 ▲戻る
 

 商標登録で衆知の 「足袋の福助」 に、 ユーモアとペーソスの見い出しが、 人間味のある表情で詠まれて温かくも鋭い。 座五の 「笑み伏せて」 に、 畏まった様の中の 「物淋し」 さを描いて愛しい。

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